この響きだけ聞くと、原料となるブドウにはじまり、ワインの醸造過程において全て自然の力で造られている、“何も含まれていないワイン”というイメージかもしれません。しかし、この自然派ワインの世界は私たちの想像以上に複雑です。
一体どういうことなのか解説していきましょう。
自然派ワインに明確な定義は存在しない
多くのワインショップでは、「自然派ワイン」と銘打って、さまざまなワインが並べられています。
しかしここで注意しなければいけないのが、”そもそも自然派ワインに明確な定義が存在しない”という点です。
冒頭に、『何も使われていないワインこそ自然派ワイン』といったイメージがあると述べましたが、そうでないワインも自然派ワインとして売られています。
つまり、どこからどこまでが自然派ワインなのか、そのポイントを掴むはかなり難しいということになってしまうのです。
一体、どんなワインが自然派ワインと呼ばれているのでしょうか。
ぶどうの有機栽培と「有機ワイン」の表記について
まず、自然派ワインの中には「有機ワイン」と呼ばれているワインがあります。
これもどこか自然な醸造を経たワインという印象ですが、そもそも“有機醸造”などというものは存在していないので、これは“有機栽培されたブドウ原料を使用している”と、考えると良いでしょう。
ヨーロッパでは、有機ワイン…
つまり、オーガニックワインを名乗るための認証を受けることで、この有機ワインを名乗ることができます。
2012年からは、栽培方法だけでなく醸造法も厳しく制定されるようになっており、この認定を取得したワインは品質も確かである、と思って購入しても問題はありません。
このEUの認証機関ですが、もっとも有名なもので言うとフランスの『エコ・セール』があります。
そのほかにも、『エ・ナチュールプログレ』、『アグリキュルチュール・ビオロジック』などがあるほか、さまざまな機関が存在しています。
それぞれ認証を得るための基準は違うのですが、主にリュット・レゾネと呼ばれている農薬を最小限にまで減らした農法、農薬を一切使用しないビオロジック農法(ビオディナミも含めて)などで有機栽培されたブドウ、というのが条件となっているようです。
しかしここで注意しなければいけないのが、「有機ワイン」を造るためには、こういった関連機関の認証を得なければいけない、という義務があるわけではありません。
要するに、取得はほぼ任意であり、『この認証を受けていない=有機栽培されていない』ということではないのです。
これが、やや自然派ワインを複雑にしているポイントでしょう。
亜硫酸塩の使用量などによっても自然派ワインを定義できる
さて、自然派ワインとして認定されているワインは栽培方法だけでなく、その醸造工程もある程度厳しく管理されています。
特に多くの方が気になっているのが、亜硫酸塩の問題でしょう。
この亜硫酸塩が少しでも入っていれば自然派ワインではない、と思われている方もいるでしょうが、認証機関によって亜硫酸の仕様量が細かく設定されています。
例えば、赤ワイン1ℓあたり100mg、白・ロゼワイン1ℓあたり150mgとされています。
「亜硫酸を入れているのに、自然派なの?」と、思われる方もいるでしょうが、ワイン造りに亜硫酸は欠かせませんし(ワイン中にはさまざまな酵母、成分、細菌が存在しており、簡単にワインは劣化する)、実は亜硫酸を投入せずとも、醸造過程で必ず亜硫酸は作られます。
とはいえ、亜硫酸が極少量のワインは味わいがピュアであり、個性溢れる素晴らしいものになるため、難しいところです。
また、酵母もポイントです。
ワイン造りには、サッカロミセス・セレヴィシエという酵母が利用されているのですが、天然酵母か培養酵母のどちらを利用するのか、という部分でも自然派ワインを名乗れるか否かが変わってきます。
ブドウの果皮には天然の野生酵母が付着しており、それを使って醸造を行うことが重要になります。
多少、劣化を防ぐためにコントロールはされますが、本当の自然派ワインはある程度、そのままの状態で造られていると考えてよいのではないでしょうか。
運営者情報
筆者は20代後半からワインの魅力にとりつかれ、それ以来、日々ワインについて勉強をし続けている30代男性です。
ワインはもちろんチーズもこよなく愛しており、毎晩お気に入りのワインとチーズのマリアージュを試しながら晩酌するのが日課になっています。
ワインは『気が置けない仲間たちやパートナーと飲むと美味しい』というのはもちろんですが、専ら自宅でしっぽりと飲むのも嫌いではありません。
“このワインはどこで造られたのだろう、どんな思いで生産者が造ったのだろう、どんな人たちが飲んできたのだろう”とか想像したり、“グレープフルーツの香り?白い花の香り?タンニンは少なめか?”など、少々面倒くさいですが、分析しながら飲めるので個人的には気に入っています。
自分と同じように、ワインの魅力を知ることで生活が豊かになる人たちを一人でも多く増やすため、皆さんに持てる知識をたっぷりとお届けしていきます。